一銃一狗(いちじゅういっく)
つい先日、ネットで色んなブログや動画を見ている時にタイトルの言葉を見つけた。
手あたり次第に興味の向くままネットサーフィンをしていた為、何についての記事に書かれていたのか詳細はまったく覚えていないが、おそらく日本犬についての記事中で見つけたものだと思う。
一銃一句というのは、日本の狩猟スタイルのことである。
人一人につき犬一頭で猟に出る。
確かに、ヨーロッパの狩猟では犬を何頭も引き連れて猟をする。
ポインター、セッター、レトリーバーなど、犬種によって役割が異なっている為である。
だが、日本の場合はそうではないらしい。
欧州スタイルの役割分担とは違い、日本犬は全ての仕事を一頭でこなす。
秋田犬や柴犬、紀州犬、甲斐犬など、いわゆる日本犬と呼ばれている犬種はすべて猟犬である。
だが、大きさや姿形、性格など、洋犬の猟犬の類とはまったく違う。
それもそのはずで、まず狩猟のスタイルからして違っているという事に激しく納得してしまった。
たまたま今日の昼休み、会社の人とその話になった。
ちなみに、この”会社の人”とは、いつも会話が成り立たない、物知りのフリをするあの○○さんである。
一体何の話からそうなったのかというと、この勤務先のある地方に伝わる伝説の話から昔話の話になり、キツネやタヌキが出るという話になり、果ては熊も出るという話になった。
すると横から年配のおじさんが
「昔は”クマノイイ”って家にあったぞ」
と言い出した。
クマノイイ?
と最初は何のことかと思ったが、ああ、”熊の胆”の事かと気づいた。
「ああー、熊の胆。実際には知らないけど聞いた事あるよ。生薬だか漢方だかの薬だよね?」
と言うと、おじさんは「そうだ」と言う。
「熊から取れる薬だかで、昔は熱が出たりしたら飲んでいた」
と言う。
「へぇ~、今でもあるの、熊の胆って?見た事ないわー」
と聞くと、
「今はどうかなぁ。見ないなぁ」
との事。
「昔はそういうのを富山の薬売りが売りに来てたんじゃない?」
と言うと
「おお、そうかもしれないな、富山で熊が獲れるのか?」
と逆に聞いてくる。
「いや、富山はどうかしらないけど、まぁ山だしここらで出るんだったらいるんじゃない?っつーか、熊はマタギが獲るんじゃないの?秋田の」
と答えた。
すると、黙って聞いていた○○さんが急にテンション高く
と話しに入ってきた。
と答えると、
「そうだよ、マタギだよ!ハンターだよ、ハンター!」
と、やたらハイになっている。
なんだろな。
よっぽどマタギが好きなのかね?
と思っていると、
「ねぇねぇ、マタギってハンターだよハンター!」
と何度も繰り返し喚いている。
「わかってるってば~wwww」
と笑いながら答えているときに、タイトルの一銃一狗という言葉を思い出したのだ。
○○さんの事だから、まぁ知らんだろうと思って紹介する事にした。
「そういえばさー、一銃一狗って知ってる?」
と聞いた。
「え?い、いち?いちじゅう?いや、知らない」
と、案の定知らなかった。
今回は知ったかぶりするのは止めたらしい。
「一銃一狗っていうのは、日本の猟のやり方なんだって」
とさわりを説明しだすと、
「あ~、はいはい、あれかー。一度に大量に狩ると自然が崩れるからなぁ。うんうん」
などといかにも知っている風にトンチンカンな事を言い出す。
おそらく、「猟一回につき獲物一頭」とか勝手に解釈しているのだろう。
多分、その言葉の漢字も思い浮かんでいないはずである。
私も知らなかったら思いついていない漢字である。
「いやいや、そうじゃなくてね、日本の猟師は猟に出る時には犬一頭だけ連れて行くっていう意味。イギリスのキツネ狩りとかはさー、犬何頭も連れていくじゃん?追いたてる役とか吠える役とか探す役とかさー、種類によって役割が違うんだよね」
と説明すると
「えー、そうなの?」
と初耳かのように言う。
またですか~、犬に詳しいはずの○○さん~。
セッターとかポインターの名前の意味もわかってないんだろな、きっと。
「うん、そう。でも日本の場合は一頭が全部の役やるんだよ。秋田とか柴とかさー。だから一銃一狗なんだって」
と説明すると、
「へぇ~、初めて聞いたよ、その話。ふ~んそういう事か~。やっぱ一度に大量に獲るのはマズイからなぁ。マタギはちゃんと守ってるわけだ。なるほどなぁ~」
と、しきりに感心していた。
ええ~~・・・
また最初に戻ってる?
いやぁ、なんていうかね、結果的に大量捕獲には繋がってないわけだけど、そういう説明じゃないんだけどねー。
この人に説明が一回で通じた試しが無いのは一体なんでなんだろー。