アリ地獄の会話スパイラル
人事異動の時期で、今年は5名の入れ替わりがあった。
勤め先の企業体質が古く、シャチハタが禁止されており、印鑑は必ず認印を朱肉で押す事になっている。
といっても、本社やその他の支社、支店等ではシャチハタは解禁されており、現在でもわざわざ認印を使用しているのは、我が支社のみとなっている。
今回異動して来た5名のうち3名が、なかなかに珍しい姓の持ち主なのだが、前の勤務地ではシャチハタを使用していたため、すぐに使用できる認印を所持していなかった。
100円ショップの印鑑コーナーを探してみたが、そこには並んでおらず、会社持ちで別注で作らなければならなくなった。
珍しくない姓の残りの2人分は、100円ショップで購入して都合した。
いつも事務用品を発注している業者に発注すると、ただの認印でもかなり割高になってしまうという事で、ロボット上司がわざわざ割安なはんこ店を探して購入してきた。
どうやらその場ですぐに作成してくれる店らしいのだが、一度に3本も作るとなると待ち時間が長くなるため、後日受け取るという事で、その日は手ぶらで戻り、翌日受け取りに行った。
とまぁ、そういう経緯で印鑑を購入したのだが、その数日後に例のおばちゃんが話しかけてきた。
どうやら、別注で購入した人のうちの一人が、予備にもう一本欲しいと言い出したらしいのだ。
そのおばちゃんには、印鑑を別注で購入した件を話してあったので、経緯はわかっているはずだ。
「別注で買ったはんこだから、買うにしてもそこまで行かないとダメだと思う」
と伝えておいた。
そのまた数日後、おばちゃんが直接ロボット上司に
「予備の印鑑が欲しいと言ってるので、作ってほしい」
と伝えに来た。
ロボット上司は、またそのはんこ店にわざわざ行くのが面倒だったようで、シブッていた。
そこでおばちゃんが
「じゃあ、いつもの事務用品店に注文します」
と言ったのだが、ロボット上司は首をたてに振らなかった。
いつもの業者に頼むと、そのはんこ店の倍の値段になるのだ。
ところが、そのはんこ店はおばちゃんがよく通る通勤途中の道にあるらしく、結局おばちゃんが会社帰りに自分で買いに行く事になった。
まぁ、それはそれで解決したのだが、問題はその翌日。
翌日、おばちゃんが私のところへやってきて、おもむろにモンクをたれ始めたのだ。
「最初に作ったハンコって、いつもの事務用品店で作ったんだよね?」
と聞いてきたので、この間説明したのに何言ってんだ?と思いながら
「違うよ。最初のはロボット上司が探した店で作ったんだよ。昨日行ったんでしょ?」
と答えると
「ええ?じゃあ他の2人のを事務用品店で買ったっていう事?」
とさらに追及してきた。
しかも違っている。
「いつもの事務用品店は高いから、そこでは何も買ってないよ。他の2人のは100円ショップだよ」
と答えると
「どういう事?じゃあいつもの事務用品店で何を買ったの?」
「何も買ってないよ、あそこは高いから」
「え?いつもの事務用品店で買ったって言ってたよね?」
「言ってないって」
「ええ~?でも100円ショップで買ったんだよね?」
「それは買ったよ。簡単な名前の2人分ね」
「ええ~?どういう事?じゃあ後の3人はどこで買ったの?」
「だーかーらー、昨日おばちゃんが行った店でロボット上司が買ってきたんだって」
「ええ~?じゃあいつもの事務用品店では何を買ったの?」
「なにも買ってないってば~」
・・・・・・(ー ー;)
といったアリ地獄のようなやりとりがしばらく続いた。
どうしてそんなにいつもの事務用品店にこだわるのか。
意味がわからず、結局何が気になるわけ?と尋ねてみた。
おばちゃんは、前日の会社帰りに、くだんのはんこ店に立ち寄った。
すでに作ってあったはんこを見本として持って行ったのだが、そこで
「ああ、これウチで作ったやつですね」
と言われたらしい。
ところがおばちゃんは、私が散々説明していたにもかかわらず、いつもの事務用品店に注文したものだと"なぜか"思い込んでいた。
「いえ、これは別のところで作ったはんこです」
と答えたら、はんこ店の人が
「おかしいなぁ、うちの商品だと思うんだけどなぁ」
とずっと言ってたと。
なんなんだよ、どこから出てきたんだよ、いつもの事務用品店が~(ーー;)
しかも、どうでもいいからスルーでいいだろと思うようなやり取り。
しかし、どうやらおばちゃんは、はんこ店でのそのやり取りが気に食わず、
「なんでちゃんと説明してくれないのよ、間違って変な返事しちゃったじゃない!」
だの
「100円ショップで買ったとか言ってたじゃん!」
だの、支離滅裂な事を言いながら私を散々責めた。
要するに、ちゃんと説明がなかった為に、恥をかかされたと思っているようだった。
だけどさー、ちゃんと聞いてなかったのはおばちゃんなんだよ。
勝手な思い込みで自爆しただけでしょーに。
言われっぱなしなのも癪なので、取り敢えず突っ込んだ。
「ちゃんと説明したつもりなんだけど、わからなかった?100円ショップで探したけど、なかったって言ったでしょ?」
「うん、言ってた」
「ある分だけ100円ショップで買ったのも話したよね?」
「うん」
「ロボット上司がはんこ店探して、なかった分を買いに行った話もしたでしょ?」
「うん、してた」
「この説明の何が変だった?」
「・・・・・」
多分、このおばちゃんは心屋氏が言うところの後者だ。
前者だと勘違いして、あちこちに首を突っ込んで、クルクル回って舞い舞いしている後者なのだ。
私は心屋ブログの「前者後者」の一部をざっと流し読みしかしていない。
だから、後者の扱い方がわからない。
ひょっとしたら、こんな風に追い込んではいけなかったのかもしれないと、後になって反省した。
きっと私の話はちゃんと聞いてはいるのだろう。
聞いてはいるのだが、わからないだけなんだな、多分。
わからないのか…
こんなのばっかりなんだよなぁ(T_T)