疑り深いことと、自信満々なことの紙一重
こと細かに説明しても、まったく信じてくれない人というのが世の中にはいる。
とにかく自分が一番正しいのであるから、相手の言っている事はウソなのだ、と思い込んでしまっているのだろうか。
軽はずみに捉えない、慎重な人ともいえる。
びっくりするような報道を見て、「このニュースは本当なのか?」とまず疑ってかかるというのは、どちらかと言えば良い態度だと思う。
しかし、日常のちょっとした事で、そこまで頑なに疑われても困るのである。
私の現在の勤め先は、某大手企業のグループ子会社である。
グループ企業が多数存在し、似たような社名がゴロゴロある。
そのゴロゴロある社名のどこどこ支社・支店・営業所となると、いったいいくつあるのやら。
ある日、どこかの業者が事務所に○○さんを訪ねて来た。
ところが、我が勤め先にはそんな名前の人物はいない。
歩いて2~3分ほどの場所に、同じグループの別会社の支店がある。
それはそれは、似たような社名である。
例えば、我が勤務先が「東洋産業」だとすれば、その会社は「東洋事業」みたいな。
そこに○○さんは存在する。
というわけで、その訪問者は明らかに「東洋事業」に行こうとして、間違って「東洋産業」の方に来てしまったというわけだ。
なので、ごく当たり前の対応として
「○○さんは、弊社ではなく「東洋事業」さんの方です。ここから2~3分ほどの所に事務所がありますので、そちらの方へお願いします」
となって、道順の説明をして終了となるはずだったのだが、この時は違っていた。
その訪ねて来た人が、まったく信じてくれないのだ。
「え?東洋事業さんですよね、ここは」
「いえ、違います。こちらは東洋産業でして、まったくの別会社なんですよ」
「え?でも事務所が2つあって、東側だってお聞きしましたけど」
「東洋事業さんの事務所はこの近くに2ヶ所ありまして、ここから2~3分のところが東側の事務所なんですよ」
「え?でも地図で確認しましたけど、東側がここですよね」
「いえ、ここからだいぶ離れたところにもうひとつ別の事務所があって・・・」
「え?でも・・・」
と、かなりしつこく食い下がってくる。
違うっつーてるのに、どう言えば納得してここから去るのか、この人は。
結局、最後は外まで連れ出して、社屋に掲げてある社名の看板をみせながら
「こちらは『東洋産業』です。東洋事業さんは別会社です」
と説明してお引き取り願った次第だ。
その人は納得できず、ものすごーくシブシブな態度で去っていった。
でも、しょうがないのだ。
納得できずとも納得してもらわなければ。
いくら粘られても、ここには訪ねた相手である○○さんはいないのだ。
なんで、そこで粘るんだか。