傘がない…
そんな歌があったなぁ。
それはさて置き、実際に傘が無くなったのな。
会社の共用の傘立てに置き傘として置いていた古い傘なのだが。
午後から雨が降ってきたので、帰りにその傘を使おうと思って傘立てを見たら無くなっていた。
誰かが使って持って帰ったのかもしれないなぁと思い、その日はロッカーに置いてあるビニール傘を使う事にした。
翌日になっても傘は戻されていなかった。
数日経っても戻ってこなかった。
もう10年以上も前に家の近くのスーパーで買った安い傘だが、ちゃんと日本製で柄と持ち手が木製で、持ち手の太さが太目で持ちやすく軽い。
傘自体も大きくて使いやすくて気に入っていたのだ。
誰が持って帰ったかわからないが、早く戻してくれないかなぁと思っているうちに10日ほどが過ぎた。
派遣さんの上司である◯◯さんに、ふと思い出してその傘の事を聞いてみた。
「私の傘がなくなってるんだけど、◯◯さん持って帰った?」
◯◯さんは
「えー、傘?う~ん、知らないなぁ」
と言っていた。
「あ、そう。知らないならいいんだけど、無くなってから10日くらい経ってるからさー。あれ使いやすくて良い傘だったんだよね。使うのはいいんだけど、戻しておいてほしいんだよねー、誰だろうなぁ」
と言うと、◯◯さんは
「うーん、誰かなぁ、車かバイクで通勤してるやつらは傘は使わないだろうから、この辺の寮の奴らじゃない?」
と言う。
ちなみに◯◯さんも単身赴任の寮住まいである。
そうかもなぁと思い、
「うん、ちょっと若手のみんなに聞いてみるわ」
と言ってその話を終えた。
結局、私も傘の事をすっかり忘れていたので、若手の社員たちにその事を尋ねないまま土日の休みに入った。
そして休み明けの月曜日。
会社に来て傘立てを見ると、なんと傘が戻されていた。
これってさ、すっかり答えが出ちゃってるよね。
犯人は◯◯さんだろ。
なんで正直に言わないのかねぇ。
すっかり呆れながら、◯◯さんの部下である派遣さんにその事を話した。
すると派遣さんは
「ああ~、はいはい!いや~、それねー私も見たんですよねー。この際だから
goru-goruさんにはチクッちゃいますけどー、その傘、◯◯さんの車にすっと載せっぱなしになってたんですよね~。アタシ、goru-goruさんの傘だって知らなかったんで~、車に傘乗せてるの珍しいなぁと思ってたんっすよぉ~」
と、笑いながら言っていた。
「ああ、そんなこったろうと思ったけどね~。使うのはいいんだけど、ちゃんと戻しておけっつーんだよ。しかも尋ねたときに”いや、知らないなぁ~”ってすっとぼけてんだよ?あり得んでしょ。まぁその時は忘れてたかもしれないけどさー、戻す時に”借りたまま忘れてた、ごめん”とか何か言えっつーんだよ。黙ってシレ~~っと傘立てに戻してるんだよ?呆れるわー」
と言うと、派遣さんも苦笑いで
「もうねー、◯◯さんはそんな事しょっちゅうですよ~。間違ってても言わないで隠してますからねー、ほんとにねー」
と言っていた。
まぁ◯◯さんというのがそういう人だというのは分かっていたが、改めて呆れてしまった。
「しかもさ、そもそも何でその傘を持って行くのよ?しょっちゅう一緒にお昼食べに行くときに私が使ってるのを見てるはずだからさ、私の傘だってわかってるはずなんだよね。誰のかよくわからないビニール傘を持って行くならまだしもさー。ほんとよくわからん人だわ~」
と言うと、派遣さんは大きく苦笑いしながら
「◯◯さんっぽいなぁ~ww」
と言っていた。
そして改めて派遣さんに言った。
「私が◯◯さんの事を”気が狂ってる”っていつも言ってるのはそういうとこなんだよね。あの人絶対おかしいって」
と言うと、派遣さんは
「ああ~、わかります、わかります。まったくなぁ~、◯◯さんだなぁ~」
と、半ば諦めたように言っていた。