出世欲
「若手くんってさー、すっごい出世したい人なんだねー!」
と、ある日おばちゃんが話し掛けてきた。
いきなり何なんだ、と思いながら聞いていると、どうやら昼休憩の時だかに若手くんが皆の前でそういう意味の事を堂々と発言していたそうだ。
おばちゃんによると、「早く仕事全部覚えたいんすよね~」みたいなカンジで言っていて、周りは”やる気満々だなぁ”とか”向上心があっていいね”みたいな印象だったらしいのだが、最後が良くなかった。
「早く仕事覚えないと、上に上がれませんから」
と言い放っていて、その場にいた人全員がギョッとなったらしい。
いや~、まぁね、そういう考え方の人はよくいるんだけど、あんまりそうやってあからさまには言わないかなぁ。
若手くんの問題は、向上心旺盛なのは良いのだが、覚えた仕事を実践しようとしないところなんだよね。
覚えるだけ覚えたらもういいみたいで、人に振りまくって自分ではやろうとしない。
いかに楽して出世するかっていう所に重点を置いてるからなぁ、若手くんの場合。
出世して管理職になっても、部下がついて来ない管理職になってそうだよねー。
ある日、所用で社長がこちらの支社に立ち寄ることになった。
それを聞いたおばちゃんが、いきなり若手くんに向かって
「ね!ね!若手くん!社長が来るんだって!!ね!社長に話し掛けて売り込まないと!ね!ね!だって若手くん、出世したいんだもんねー!!」
と皆に聞こえるようなデカい声で喚いていた。
うわぁ~( ゚д゚)
そんな嫌らしい事をはっきり言いますか~?
それ、若手くんの印象めちゃめちゃ悪くないか?
いや、私の中では元々印象良くはないけど、それにしてもねー。
と思っていたら、若手くんと仲の良い中堅どころの社員が
「おばちゃん~、そういう言い方は良くないよ〜」
と素で注意していた。
おばちゃんって、こういう人なのよ。
”そんな事大っぴらに言うもんじゃないよ”っていうような事を平気で言っちゃうんだよなぁ。
当のおばちゃんはというと、
「えー、だって!だって!若手くん、前にそういう事言ってたし!アタシが言ったんじゃなくて、若手くんが言ってた!言った!言った!アタシじゃない!!」
と、途端にタドり出して、ひたすら自分は悪くないと主張していた。
まぁなぁ。
ついでにアンタの印象も更にダダ下がりだよねー。