今回の人事異動雑感
私は人事の仕事をしているワケでもなんでもないので大きなお世話かもしれないが、今回は私にとってはそこそこのはなまる人事だった。
だが、どうやら伝え聞くところによると、新たに私の上司になった新課長はどちらかと言えば左遷の感が強いようなのだ。
最初に入社した時は、現場系の設計などの仕事をしていたらしいのだが、何があったのか内勤の事務系に異動になり、その後はずっと総務経理の仕事で各支社を渡り歩いていたらしい。
その後、本社に新たに創設された法務関連の部署に異動になり、そこで2年ほど勤務してから今の支社に元の仕事で異動になってやってきた。
その今回の異動に関して、人から聞いた話の段階では本人がその仕事に根を上げて異動を希望したのかと思っていた。
ところが、本人の言動や他支社の人との電話での会話を聞いていると、どうやらそうでもない事がわかってきた。
新課長の異動を希望したのは、新課長本人ではなく新課長の上司だった人のようだった。
最初に私が伝え聞いた話は
「ロボットさんも大変だよなぁ~。ここの会社って言ったもん勝ちのところがあるからなぁ。何も言わずに会社命令に従って黙々と働いてる方がバカを見るようになってるんだよ。ちょっと弱音を吐いて上に訴えたらすぐに希望通りにしてもらえるんだからなぁ。ほんと、ロボットさんはそれに振り回されてるよなぁ」
というものだった。
新課長が正式に異動してくる数日前にこの話を休憩室でおしゃべりしている時におばちゃんの上司に当たる人からチラッと聞いたのだ。
これを聞いた限りでは、新課長がその時の仕事に(なのか人間関係なのかはわからないが)嫌気がさして異動を願い出て、今回の異動になったのだと思っていた。
ところが、新課長が着任してから最初の数日間、他支社の同期や仲の良い人たち(この人たちもみな課長クラスなのだが)から引っ切り無しに電話が掛かってきていた。
その人が突然異動になったので皆心配して様子伺いで掛けてきたのだと思われる。
そのうちのある支社の課長との会話で
「いやぁ、なんだかよくわからないうちにまたこの仕事にもどっちゃったよ。え?なんでか?いやー、オレが出来が悪いから交代させられたんじゃないかなぁ。まぁあの部長だしなー」
みたいな事を言っていた。
んん?
なんか聞いてたのとビミョーに違うなぁ、と、その時はなんとなく思っていた。
後から、新課長の前の上司がどういう人なのかを他の社員に聞くと、いかにも体育会系で負けずぎらいでイケイケドンドンなタイプの人らしい。
いかにも文化系で大人しいコツコツタイプの新課長とはそれはそれはソリが合わなかった事だろう。
で、この人事異動というのは丸っきりの新課長とロボット二人の入れ替わりなのである。
つまり、現在はロボットがその体育会系のイケイケ上司の下に異動になったワケだ。
そういえば記事にするのをすっかり忘れていたが、最後のロボットの挨拶がまたすごかった。
ロボットが最後の日、帰る前にちゃんと挨拶しておこうと思っていたのだが、ロボットが席を外していてなかなか戻ってこなかった。
最後の整理をしていて社内をウロウロしていたらしい。
しょうがないので戻ってくるまで休憩室でお茶を飲んで待っていた。
すると、珍しく向こうから私を探して休憩室にやって来て、
「goru-goruさん、最後なんで挨拶しようと思って」
などと殊勝な事を言っている。
まー珍しい。
向こうからわざわざやって来るとは思っていなかったので、いささか驚きつつも
「あー、わざわざすみません。今までどうもお疲れ様でした。色々とご迷惑をお掛けする事もあったかもしれません
が…」
と言いかけると
「ああ、別にいいですよ」
と、ツーンと言ってのけてくる。
ええ?
そんな返答ってあるの?
社交辞令でも「こちらこそ色々とすみませんでした」とか「ありがとうございました」とか言いませんかね、普通。
やっぱり最後の最後までこの人らしい言い方だわ~、と呆れながらも
「色々と大変でしょうが、次の部署でも頑張って下さい」
と言うと、
「そうなんですよ、大変なんですよね~。向こうが手ぐすね引いて僕の事待ってるんでねー、もう既に色々と課題出されてるんですよねー」
などと言う。
あのさ。
普通はそこで「ありがとうございます」だの「はい、なんとか頑張ります」だの、ちょっと謙遜しつつ話終わらせるんじゃね?
なんか謙虚さのケの字もないし、どちらかといえば自身満々なカンジで答えてるし、まだ会話続きそうだし、なんなのコレ?
「あ、ああ~、そうなんですかー…。いや、でもロボットさんならそれなりにちゃんとこなして行かれるでしょうから、大丈夫なんじゃないですか?」
と、やっとなんとか絞り出した社交辞令で返答した。
すると、
「はい。なんとかなります。僕だったらやって行けると思うんで」
とか返答されてもう倒れそうだったわ。
「ああ~、そうなんですかー。いや~、じゃあ大丈夫ですね~。頑張って下さい、どうもお世話になりました~」
と、こっちがもう話を切るしかなかった。
あービックリした。
こんな謙遜も社交辞令も何もない自画自賛の最後の挨拶、初めて聞いたわ。
というようなやり取りをしたもんだから、今頃ロボットはそのガミガミうるさそうな上司の下でさぞかし上手くこなしている事だろうて。
ここでは全然こなせなかったんだけども。
と、思っていたのだが。
そうは問屋が卸さないワケ。
人事異動があって4、5日ほど経ってから、やたらとその新課長の前上司であるイケイケ上司から日に何回も電話がかかってくるようになった。
まぁ、掛かってきた電話は私が取るので、あからさまにわかる。
ただ、新課長も赴任してきてすぐの頃は色んな所へあいさつ回りに行ったり、色んな手続きをしに行ったりで席にいない事が多かったのだ。
まぁ当然、「外出しています」と言って電話を切りメモを貼っておくわけだが、どういうわけか新課長は戻って来てからもなかなかその前上司に電話を折り返そうとしない。
もうこの態度でおおよその流れはわかってしまったんだよなぁ。
本当に前の上司の事が嫌いだったんだろうな。
で、2、30分後にやっと覚悟を決めたのか電話を掛けていた。
内容はというと、データの保存場所がわからないだの、ファイルの場所がわからないだの、探してみたらわかりそうな質問ばかりされていて、新課長もちょっとうんざりしていた。
あれ?
ロボットさん、そんな事も出来ないのかな?
出来なかったからシビレを切らせて電話してきたんだろうな、上司が。
それからの数日間、毎日そのイケイケ上司から電話があって、わからない事を新課長に尋ねていた。
その会話の合間に
「ああ、はい、分かりました。僕で答えが出せるかどうかわかりませんが、なるべくロボットさんが慣れるまでは分かる範囲で協力していきますので。はい、はい…」
などと答えている。
うわ~、気の毒~~。
わからない事だらけのロボットのフォロー頼まれちゃってるよ。
なんだか人の好さそうな人だし、上司から言われてるし、頼まれたら断れないだろうなぁ、そりゃ。
そういう事が何日か続いたある日、またイケイケ上司からの電話で新課長が話している時に決定的な事があった。
新課長の受け答えしか聞こえないので推測も混ざるが、おそらくそのイケイケ上司が新課長に頭を下げたのだと思われる。
新課長が
「はい。はい。ああ、はい、分かりました。はい、ではこちらでも色々調べてリストアップしてみますので。はい。はい。ええ?!いえいえ、そんな、謝らないでください!そんな事はいいんで!ロボットさんも勝手がわからないだろうし、僕の方でも出来る限りの事はしていきますので。はい。はい…」
などとなんだか不穏な会話をしている。
おそらく、さんざん新課長にパワハラめいた事をしていたイケイケ上司がロボットのおバカさに根を上げたのだと思われる。
しっかりしてそうだから任せていたものの、全く使い物にならない事がわかり、同時に前の部下だった新課長がいかにきっちりとこなしていたのか、今になって気付いてこの有り様なのだろう。
まったくなぁ。
ここの会社の管理職ってこういうタイプの人多いのよ。
実は今まで部下に散々助けられていたにもかかわらず、ちょっと気が合わないからといって仕事の内容を評価せずに飛ばしてしまって、居なくなってからありがたみに気付くっていう。
ここまではっきりとした”後悔先に立たず”も珍しいわ。
まぁ私が一番呆れてるのは”僕なら出来る”って豪語してた人。
一体どうなってるんだか。
なんで根拠もなしに自信満々に言っちゃうんだろうなぁ。
ほんと聞いてるこっちが恥ずかしくなる。なぜか。