goru-goru綴り

日頃のもやもやを書き綴ります

人助けに男も女もあるもんか


今朝、会社に認知症らしき年配の女性が迷い込んできた。


まだ始業前の早い時間に、現場作業の若い社員が私の所にやってきて、

 

「goru-goruさん、今日、ロボットさんいないんですか?」

 

と聞いてきた。

 

あいにくロボットは今日休みを取っていたので、

 

「今日は休みなんだけど、どうしたの?」

 

と尋ねると

 

「なんかよくわかんないんですけど、下の倉庫におばあさんみたいな人が来てて、こちらに何か用ですか?って聞いたら車がどーのこーの言ってて、イマイチよくわかんないんですよ~。ロボットさんのお客さんかなぁと思ったんですけど、近所の人か何かですかねー?」

 

と言うので、よくわからないまま1階の倉庫に降りて行った。

 

いつも倉庫のシャッターは降ろして閉めきっているのだが、その日はたまたま朝早い時間から現場作業用の資材を搬出するために開け放っていたようだ。

 

その倉庫の中に、ちょこんとおばあさんが立っていた。

 

おばあさんの方に近づいて、

 

「どうされましたか?こちらに何かご用ですか?」

 

と尋ねると、ぼんやりしたような表情で

 

「えっと~、車がなくて~、んー・・・、えっと〜、よくわからないです・・・」

 

と、要領を得ないような事をぼそぼそと言う。

 

これは完全に認知症だとすぐにわかった。

私の母も、同じような症状だったのですぐに気付いたのだ。

 

どこからかウロウロと迷って来て、何がなんだかわからないような状況になっていたのだと思われる。

 

すぐさま、

 

「お家の方に連絡取って迎えにきてもらいましょうか。その方がいいですよね」

 

と尋ねると、そのおばあさんはホッとしたように「はい」とニッコリして言った。

 

「何か連絡先がわかる物、お持ちじゃないですか?」

と聞くと、かばんの中身を見せてくれた。

 

財布が入っていたので、

「ちょっと、財布見せてもらってもいいですか?」

と了解を得て財布の中を見てみると、おそらく本人の氏名と年齢、自宅の住所と連絡先と保護者の名前が書かれたメモ用紙が入っていた。

 

やっぱり。

何かあったときの為に、家族が持たせていたのだと思われる。

 

確認のために、そのメモに書かれている名前を見ながら

「◯◯ ◯子さんですか?」

と尋ねると「はい、そうです」と答えたので、本人に間違いないだろう。

 

とりあえず、倉庫は暑いので休憩室で待ってもらう事にして、家族に連絡を取った。

 

ところが、メモに書かれている自宅の番号に掛けても誰も出ない。

 

携帯の番号にかけると、最初は「はい・・・」と出たのだが、車で移動中だったのかすぐに切れてしまった。

 

何度か掛けてみたが、「電波が届かないか電源が入っていない」の繰り返し。

少し時間を置いて何度か掛け直しても同じだった。

 

以前何度かエントリー記事に登場した契約社員のおじさんも手伝ってくれて、二人で手分けして何度か連絡を取ろうとしても、やはり繋がらない。

 

しょうがないので、警察に保護してもらう事にした。

警察に電話を掛けて事情を説明すると、警官がすぐに迎えに来てくれることになった。

 

迎えを待っている間、そのおばあさんを一人にするわけにもいかず、10分ほど話し相手になっていた。

 

その後、警官が迎えに来て、色々と事情を説明していた。

 

その間、おじさんがずっと家族の方の携帯に何度か掛け直してくれていてやっと繋がったらしく、警官と家族の方が直接話をする事ができて、事なきを得た。

 

あー、やれやれひと段落ついて良かった。


といったようなイレギュラーな出来事が朝いちから起こって、すでにドッと疲れていた。

 

すると、その後次から次へと男性社員がやってきて、

 

「さっきの人、一体何だったんですか?」

「結局どうなったんですか?」

 

などと、遠巻きに見ていて何も協力してくれなかったのに、気にはなったのか質問責めにあった。

一応聞いて来た人には経緯を説明しておいた。

 

すると、その中の一人が、

 

「なんか、あの人僕について来てたんですよね~」

 

と言い出した。

 

「えー?どういう事?」

 

と聞くと、朝出勤して来たとき、会社の前の信号からずっとついて来ていたのだという。

 

「なんでついて来るのかなぁと思ったんですけど、気持ち悪いからそのまま無視して会社に入ったんですよね~」

 

と言う。

なんでそこで事情を尋ねないんだよ。

 

他の数人も、

 

「僕も倉庫に入って行くの見たんですけど、不思議だなぁと思いながらそのまま放っておきました」

 

と平気な顔で言う。

 

なんなんだこの人たち。

 

結局、一人が私に言いに来るまで、おばあさんがふらふらと迷い込んで来た事を知っていて放置していたらしい。

 

ほんと、聞いていて呆れた。

 

その事を後からおじさんに報告すると、

 

「最近のヤツらはそんなもんかもしれんなぁ」

 

と、同じく呆れながら言っていた。

 

しばらく経ってから、休憩室で洗い物をしていると、社員が一人やってきて

 

「goru-goruさん、お友達、どうなりましたぁ~?」

 

と、からかうような口調で尋ねてきた。

コイツは前から波長が合わない。

いちいち人を小馬鹿にする様な言い方をして、話しているとカンに障るので普段はなるべく避けている。

 

最初は何を言われているのかわからなかったのだが、

 

「あの朝の変なおばあさんですよ」

 

と言われて「ああ」と気付いた。

が、変なおばあさんて何だ、とちょっとムッとしながら

 

「ああ、あのおばあさん、ちゃんと家に帰ったよ」

 

と答えた。


すると、こちらが何か言う前に、唐突に

 

「ああいうのはねー、goru-goruさんが対応しないとダメなんですよ」

 

と言う。

 

は??
と思いながら黙って聴いているとその社員は調子づいて

 

「オレらだったらこんなコワモテでしょ?ああいうおばあさんは恐がるじゃないですか。だから、女の人がやってあげた方がいいんですって。だからオレら放っておいたんですよ」

 

と、都合の良い事をどんどん語り出す。

 

「ほら、お客さんにお茶出すのでも、女の人が出す方が良いでしょ?それと同じですよ。オレらみたいなのがお客さんにお茶出してたら、そのお客さんびっくりするでしょ?」

 

と、おばあさんを放置した事と、こちらがバタバタと対応していたのを手伝わかなかった事に、必死で後付けの言い訳をしてきた。

 

コイツだけは本当に前から気にくわないヤツだと思っていたのだが、ますますサイテーだという事が改めてわかったわ。

 

まさか人助けにセクハラを発揮するヤツがいるとは、本当に驚いた。