高機能さんの事4
約1ヶ月程前のある日、休憩室でコーヒーを淹れていると他部署の社員が話しかけてきた。
「goruーgoruさん、聞きました?高機能くんの事」
特に何も聞いていなかったので、
「別に何も聞いてないけど。どうしたの?」
と尋ねると
「この間の経営会議、恐ろしくヒドかったらしいですよ」
と言う。
今現在営業的に厳しい状況なので、会議がいつもよりミッチリと詰めて行われた。
いつもは途中から会議に参加する高機能も、最初から入って現状の数字を報告しろと前日にロボットから言われていたのだ。
明日は2人とも会議でずっと席外しだな~、と私も聞きながら思っていた。
ところが会議当日、時間になって役職以上の社員が会議室に向かっても、高機能は席を立とうとしない。
昨日、最初から参加って言ってなかったっけ?と思ったが、やっぱり途中参加に変わったのかと思い直し、そのまま普通に仕事を続けていた。
ところが数分後、ロボットが鬼の形相で戻ってきて
「高機能くん、何やってるんだよ!今日は最初から会議に出て数字の報告してくれって昨日言ったよね?!早く会議室に入って!!」
と、怒鳴り倒して会議室に戻っていった。
「え、あ、ああ、そか、あ、あ、」
などと言いながら、高機能はワタワタと慌てて会議室に入って行った。
しかも手ぶらで。
という所までは私も目撃していたので知っているが、会議の様子まではさすがに知らなかった。
その社員によると、高機能は会議の時間になっても現れず、ロボットが呼びに行ってやっと来たと思ったら、手ぶらでそのまま何事もなかったかのように席にストンと座ってキョトンとしている。
ロボットが資金計画の資料を皆に配るように促すと、高機能はあわてて会議室を飛び出した。
そういえば、高機能が会議室に入ってからしばらくして、またすぐに席に戻ってきてゴソゴソと机の引き出しやらキャビネットやらを漁っていた。
おそらく会議資料を探していたのだろう。
しばらくゴソゴソやって、また手ぶらで会議室に戻って行った。
そこは私も目撃していた。
会議室に戻るなり、高機能は「まだ報告書と資料が出来ていない」と平然と答えたらしい。
それを聞いたロボットが烈火のごとく怒りまくり、支社長がその場は「まぁまぁ」と治めて、取り敢えずロボットと支社長と他部署の管理職が自分なりに作った資料を元に会議を進めることになった。
ロボットが気を取り直して高機能に現状報告を促すと、
「え?いや、ちょっと、わからないんですけど…」
と、これまた平然と答えたらしい。
あきらめたロボットがそのまま高機能に代わり話を進めて、結局高機能はただ座っているだけで会議は終わった、という事らしい。
つーかさ・・・
出来てない資料をゴソゴソと探していたのかと思うと、そこはかとない哀しさを感じるよ・・・
なんなのよ、この人。
出来てないくせに探すフリをする姑息さはあるんだよなぁ。
今まで、叱られながらも会議に資料自体が間に合わなかった事はないと思う。
その日、私は定時で帰ったのでその場に居合わせていなかったのだが、その社員の目撃情報によると、その日の遅い時間、ロボットが高機能に
「高機能くん、来週休み明けにもう一回会議やるからさぁ、それまでにはちゃんと資料用意してね。出来なかったらオレも手伝うから。大変かもしれないけど、土曜日出勤して仕上げたらどうかな?オレも土曜日出るようにするから」
と、さすがのロボットも突き放していてばかりでは埒が明かないと思ったようで、高機能の面倒を見る事にしたらしい。
ところが対する高機能の返事は
「いや、ちょっと土曜日は午前中用があって来れません」
と、自分のせいで色んな流れが滞っているなどとは全く思っていない風に答えたらしい。
それでも、なんとかロボットは持ち堪え
「う~ん。午前中がムリなら午後からでもいいから。オレはその日朝から来るからさ、待ってるから用が終わってから来てくれないかな?」
と粘って言ったらしい。
だが高機能の返事は相変わらずで、
「いや、ちょっと用事も何時に終わるかわからないし、やめときます」
と、あっさり答えて会話は終わったらしい。
「やめときます」って、じゃあ一体いつ資料をつくるんだよ?w
結局資料作成をどうしたのかは知らないが、本当に責任感がないというか、ヤル気がないというか、まぁ事の重大さを分かっていないような態度には毎度驚く。
そして、そんな状態の人でもちゃんと正社員として雇用は守られるんだという所にも驚く。
高機能のおかしな言動は他にもまだまだある。
本社からの指示でやらなければならない事も、締め切りを守った事がない。
いつも全社で高機能待ちになるのだそうだ。
「25日までに本社に報告して下さい」
などという指示があると、必ず遅れて27日くらいにやっと仕上げて報告しているらしい。
本社は本社で困っているらしいが、本人が「まだ出来ていない」と言うから出来上がるのを待つしかない。
そういう事を続けているうちに、高機能の中では「本当の締切は言われた日の2、3日後」という公式が出来上がってしまったようだ。
「遅れてもどうせ待って貰える」という、また姑息な発想で動いているらしい。
以前、高機能が自分で言っていたのを聞いた事があるのだが
「仕事に必死になるのって、バカらしいと思うんですよね。ゆるーく大体でやった方が楽だし、必死にやっても適当にやっても給料変わりませんから」
とほざいていて、耳を疑った。
もちろん、こんなサイテーな発言をするくらいなので、自分の事は棚に上げまくり。
前向きに一生懸命仕事を頑張っている若手社員の事を、常に小馬鹿にしているのだ。
いやいや、違うだろー。
アンタの場合、自分がサッパリ出来ないからやりたくないだけでしょうよ。
何をサラッと出来る人みたいに言っちゃってるんだよ。
おそらくこの病気で悩んでいる人の中には、なぜ自分はこんなにダメなんだろうと思っている人がいると思う。
はっきり言える事がある。
あなたは決してダメなどではない。
なぜなら、自分の現状をしっかりと把握出来ている。
自分で自分の事をまるでわかっていない為、平気で周りを振り回している人もいるのだ。
高機能自身は自分が病気だとは思っていない為、悩む事はない。
どちらかといえば、周囲の方が悩んでいる。
家族は心配して病院に連れていったりしないのだろーか?
家でどういう躾をしてきたのかも、本当に不思議なのだ。
高機能の機能がドンドン低下していっているような気がするのは私だけなのだろうか?