鏡開きの日はぜんざい
職場でも、11日は飾っていた鏡餅やしめ縄などを外す日であるが、毎年鏡餅はぜんざいにする事になっている。
そんな時に、俄然はりきるのがおばちゃんである。
鏡餅といっても、今時のプラスチック製の鏡餅の中に、小餅が入ったものなので、わざわざお餅を割る必要もなく便利である。
普通は、お餅が残るからぜんざいやおかきなどにして処分するという順序のはずなのだが、おばちゃんの場合は些か違っている。
あくまでも、ぜんざいがメインなのである。
わざわざお餅を買い足してまでぜんざいを会社で作る。
ちなみに、私は今までぜんざいを作る会社に勤めたのは初めてである。
当日、おばちゃんの中での主要な仕事はぜんざい作りであるので、午前中から早速買い出しに行っていた。
そして帰って来てからの第一声が
「小豆買うの忘れちゃった~」
である。
ええ~?
普通、ぜんざいを作ろうと思って買い物に行ったら、まず小豆を買うのでは?
と思いながら、結局何を買ってきたのか聞いた。
「え?やだお餅に決まってるじゃない~。必死でお餅探してるうちに小豆の事すっかり忘れちゃってた」
だって。
いやいや、お餅はわざわざ買わなくても、既にあるんだからさー、なんで買い足す物がお餅メインなの?
しかも、ぜんざいは好き嫌いがあるので、当然食べられない人がいるのだが、きっちり人数分作って、結局余らせるというのを毎年繰り返しているのだ。
本当に毎年不思議である。
私が入ってからはじめての鏡開きの日、ぜんざいを作ると聞いて、そんな事もしないといけないのかー、と思ったものだ。
作るところを見て覚えようと、おばちゃんに「作るとき手伝うから声かけてね」とお願いしたのだが、絶対に一人で作ってしまって、教えてくれないのだ。
翌々年くらいに、「作り方教えてほしいから」と再度頼んだのだが、「ああ、これこれ」と小豆の袋を見せながら、「この裏に作り方書いてあるから」と言われておしまい。
結局、一緒に作った事は一度もない。
ぜんざい担当者としては一人でやりたいのだろうと思って、声を掛けることはすっかりやめてしまった。
その割に、いつも出来上がり寸前に、人の忙しさにはお構いなしに
「goru-goruさん、ちょっと来て〜」
と呼ばれ、味見をさせられる。
私が味見をして「良いと思う」と答えると、皆に振る舞うわけだが、誰かが「味が薄い」だの「甘過ぎる」などと言おうものなら、「ええ〜、goru-goruさんに味見して貰ったのに〜」と、必ず私のせいにする。
ある年、それが嫌で「忙しくて手が離せない」と味見を断わった事がある。
が、誰かが「ちょっと濃過ぎる」と言った時に
「goru-goruさんが味見してくれなかったから、濃くなり過ぎちゃった」
と答えていて、結局私が悪い事にされていた。
毎年、鏡開きの日は、おばちゃんのハイパーさが際立つ日になっている。