goru-goru綴り

日頃のもやもやを書き綴ります

とうとう、前任の上司について書いてみる その5

 

ある日、当時嘱託社員として勤めていたおじいさんが、誰もいない時に私の所へやってきて、こっそりと教えてくれた。

「この間、前任者さんが僕の部屋に来てグチこぼしてたよ」
と言う。

このおじいさんは、別室で一人、色んな書類整理の仕事をしている。

その部屋は、皆が仕事の合間に休憩がてら立ち寄る部屋になっていた。

おじいさん自身、この会社では大先輩でもあり、愛想が良く皆から好かれている人だったので、皆がおじいさんに色々と相談したり、グチをこぼしたりしていたのだ。

 

「へぇー、どうせ私の悪口言ってたんでしょ~。何か変な事言ってました?」

と聞くと、

 

「ははは、goru-goruちゃんの事は何も言ってないよ。高機能くんの事言ってたねぇ」

と言う。

おじいさんも、実は前任者の事があまり好きではないらしく、私が前任者から酷い扱いを受けているのも知っていたので、こうやって色々と教えてくれていたのだ。

 

「ふ~ん、高機能さんの事ですか。

自分で面倒みるって決めたクセに、とうとうグチりはじめましたか」

と言うと、

 

「”なんで何回教えても言う通りにできないんでしょうね。いつまで経っても報連相はできないし、誰に対しても謝らないし、礼は言わないし。どうしたら良いと思いますか、おじいさん?”

って言ってたよ。ははは、敵さん、だいぶ参ってたぞ~」

と笑いながら言っていた。

 

「最初からわかってる事なのにねぇ。

まぁ前任者さんはそこまで酷いとは思ってなかったのかもしれないですけどね」

と言うと、おじいさんが

 

「アレはなぁ、もっと前にこっちに赴任してくる予定だったんだよ、本当は。

だけど、前の支社長とgoru-goruちゃんを入社させた上司が大反対してね、本社になんとか掛け合って、別の人をうまい具合に回してもらったんだよ。

それが、前任者さんの前の上司さん」

と、人事異動の裏側を教えてくれた。

 

ちなみに、アレというのは前任者の事である。

 

「へぇーー、なんで前の支社長たち、反対したんですか?」

と聞いた。

 

「なんでも、本社勤務だった時期に、社長やら専務やらあのクラスに取り入って、余計な事をどんどん報告してるような奴だったんだよ。

僕らなんかと同じ年代のやつで良く出来るのがいたんだけど、なぜか辺鄙な支社に飛ばされたりしてねぇ。

何かおかしいと思ったやつが色々と聞いて回ったら、どうもアレが要らん事をある事ない事細かに社長やら専務やらに報告してたみたいでねぇ。

前の支社長も前のgoru-goruちゃんの上司もそういうのが嫌いなサッパリした性格の人だったから、どうしてもそんな人間をここに入れたくないっていうのでね、アレがこっちに赴任が決まったときに、あわてて二人で本社の人事に抗議しに行ったんだよ」

と、さらに詳しく説明してくれた。

うわぁーー、サイテーーーー。

「チクリ屋ですかー。ああ~、なんかわかります。

どうせそういうヤツだと思ってましたけど、酷いですね、それ」

と答えた。

「goru-goruちゃんも気をつけないと、アレが出張で本社に行ったときに何を言われてるかわからないよ」

と、おじいさんは私の事を心配するように言った。

「アレが私の名前を本社で出すワケないじゃないですか。ただの奴隷としか思ってないんですから。

高機能さんの事を必死でアピールしてるんじゃないですか?オレが育ててるって。

育ってないですけどね、全然」

と答えると、おじいさんも高機能にはほとほと困ったというように

 

「あの子もなぁ。本当に変わったヤツだねぇ。

飲みに連れて行ってやっても、自分からは何も話さないし、聞いても答えないし、でも『行くか?』って声を掛けたら嬉しそうに『行く』って言うんだよ。

どういうんだろうなぁ。何を考えてるのかサッパリわからんねぇ。とにかく変わり者だよ」

と、珍しい生き物のように言った。

 

「そっちはねー、そういう病気だからしょうがないんですよ。おじいさんも、無駄に誘わない方がいいと思いますよ。

高機能さん、おじいさんには懐いてるみたいですから、後々面倒くさくなっても知りませんよ」

と言った。

すると、おじいさんが意外そうに

「あれ?あの子は前任者さんとしょっちゅう飲みに行ってるんじゃないの?
僕より前任者さんの方に懐いてると思ってたんだけど、そうじゃないのかなぁ?」

と不思議そうに言った。

そこが私も謎な所だった。

前任者が必死で高機能に構っている割に、高機能は全く前任者に懐かなかったのだ。

それどころか、私にもたまに前任者の事を悪く言うところがあった。

 

「高機能さん、今日も前任者さんと飲みにいくの?」

と、世間話の様に尋ねると、嫌そうな顔をして

 

「ああ、今日もまた『じゃあ行こうか~』って言われるかもしれませんねー。
しょうがないから付き合ってやってるけど、面倒くさいんですよね、あの人。
今度goru-goruさんも一緒に行ってくださいよ。僕ばっかり、しんどいです」

と言っていた。

ええーー?

意外。

二人仲良く行ってるわけではないのか。

それはそうと、「しょうがないから付き合ってやってる」ってどういう言い草だよw

前任者が誘ってくれなかったら、アンタを誘ってくれる人なんかどこにもいないっつーに、と思っていた。

 

ところが、後でその謎がすぐに解ける事になった。

 

上の会話をした数日後のある日、前任者が高機能を本気で叱っていたのだ。

とにかくメチャメチャ怒っていた。

普段、前任者が高機能を叱る事はめったにない。

ヤル気を出させる為なのか何なのか、とにかく、持ち上げて、褒めちぎって、機嫌を損ねない様に気を使って接していた。

だから、私の方に高機能がやりたくない仕事が回ってきているのだ。

 

その時私は、丁度、皆に朝のコーヒーを淹れていて最初から聞いていなかったのだが、コーヒーを持って部屋に入ったらすでに高機能が怒られている所だった。

 

前任者の怒りっぷりを聞いている限りでは、どうやら前任者が居ない時に高機能が受けた電話を、後で前任者にちゃんと報告していなかったらしいのだ。

 

しかも、その電話というのが、本社のお偉いさんからの電話だった。

すぐに折り返さなければいけない電話だったのに、高機能がちゃんと伝えていなかった為に前任者が電話をせずに放置していた。

あげくの果てに前任者がお偉いさんに怒られた、という顛末だったらしい。

らしいのだが、よくよく聞いていると、雲行きはあやしい。

高機能が、頑として「僕はちゃんと電話が有ったって伝えました」と譲らないのだ。

ところが前任者は、「電話が有った事は聞いたが、内容を言ってくれないと、急ぎかどうかわからない」という怒りだった。

どうやら、掛けてきたお偉いさんは、内容を高機能に伝えていたらしい。

 

まぁ、そこが高機能の高機能らしいところと言おうか、何というか。

そこで「ちゃんと内容まで伝えないと、相手にはわからない」などと考えつくなら、高機能は高機能ではないわけで・・・。

 

もう、どちらが悪いのなんのという問題ではなくなっていた。

ちゃんと全部を伝えない高機能もおかしいが、電話が有った事を聞いたなら、急ぎうんぬん以前にすぐに折り返さない前任者も前任者だよなぁ、と思っていたら、前任者が信じられない叱り方をしたのだ。

 

報連相が大事だっていつも言ってるでしょ?高機能くんのせいで、オレが○○部長に怒られたじゃないか!今まで○○部長に怒られた事なんか無かったのに、印象悪くなっただろ?どうしてくれるんだよ!!」

と怒鳴ったのだ。

ひぇえええーーー。

何、その怒り方。小学生か。

しかも、報連相て・・・

そのレベルからやってんのかよ。

しかし、本当に自分の事しか考えてないのね、アンタって・・・

さすがにこの時ばかりは、ちょっと高機能に同情しつつ、超絶引きまくりだった。

 

そして、高機能が前任者に懐かない理由がよく分かったのだった。

おそらく、前任者が高機能を叱る時はいつも、この時のように、高機能の為を思った叱り方ではないのだろう。

そして、高機能もそれをよく分かっているのだ。

いくら察知能力が皆無とはいえ、前任者の保身ぶりは目に余るだろう。

高機能は、憮然としていたが、絶対に謝らなかった。

「自分はちゃんと伝えた」という事で高機能の中では完了している為、自分にミスは無いと思っている。

高機能ゆえ、「気が利かなくてすみません」などと思うワケがないのだ。

 

怒っている方も、怒られている方も、見ていて痛々しい。

こんなのと一緒に仕事をしている私がカワイソウ。

 

なんかもうアホらしくなって、私はトイレに行く振りをして部屋を出た。