goru-goru綴り

日頃のもやもやを書き綴ります

大係長

20年ほど前、派遣社員として働いていた。

その派遣先の上司が、アルバイトとして課題の勉強をしないか?と持ちかけてきた。

その上司があまりにも忙しく、社内教育の課題をこなせないので、私にかわりにやってくれと持ちかけてきたのだ。

その当時、私の他にも数人派遣社員がいたのだが、その上司は正社員の部下よりも、なぜか私達、派遣社員の方をかわいがってくれていた。

ちょっと面倒だったり、小難しい内容の仕事は全部派遣社員に割り振っていたのだ。

どうやら、正社員がダメダメすぎて仕事が進まないため、あわてて派遣社員を採用した残念な企業だったらしい。

派遣社員は、そもそもその会社の人間ではないという事と、そこそこ仕事が出来るので、任せても良いと判断されたのだろう。

おもしろそうだったのと、ちょっとした小遣い稼ぎにもなりそうだったので、快く引き受けることにした。

テキストと答案用紙がセットになったものを渡されて、いついつ迄に仕上げてくれという事だった。

ところが、その上司は、統括本部長というなかなかの肩書だった為、その勉強内容もその立場に沿った内容だった。

つまり、企業で上に立つ人間が学ぶような内容だったのだ。

業績を上げるには、部下をうまく使いこなすには、財務諸表から読み取る事、人材の採用・育成など、いわゆるマネジメントについて学ぶためのテキストだった。

まだ若造だった私には荷が重すぎる上、難しすぎて読んでいてもサッパリ頭に入って来ず、全部で5科目ほどあったものを、できそうなもの3科目に減らしてもらい、仕上げる事にした。

その中で一番印象に残っている内容が、人事に関する科目だった。

なぜかこの科目だけは読んでいて面白く、どんどん勉強がはかどったのだ。

そのテキストに出てきた言葉が、タイトルの「大係長」だった。

つまり、課長という役職に対する皮肉である。

課長という中間管理職は、常に業績を気にしなければならず、部下にも目を配らなければならず、上司からも面倒事を押し付けられるという板挟みの位置で、実は一番タフな役職である事は世間でもよく知られている。

昇格していく中で必ず通る、課長職。

その役割がうまくこなせない人が、実は多く存在するのだそうだ。

係長から出世して課長にはなったが、何もかも自分で抱え込んでしまい、部下に仕事を振らずに全部自分でやろうとする。

どうやって仕事を振れば良いかがわからないのか、部下を信用していないのか、アピールの為に人に仕事を渡したくないのか、いずれにしても、係長の頃と全く変わらない仕事の仕方をする。

そういう人の事を「大係長」と呼ぶのだそうだ。

そういうタイプの課長の下に付いた部下は、的確な指示がない事にイラだつし、信用されていない事を不愉快に感じるし、活躍の場を与えられない事にも不満を持つ。

課長は係長とは全く違う。

課全体に目配りしなければならない。

ジブンガー、ジブンガーとアピールしていれば良い位置ではないのだ。

部下を育てるという重要な役割がある。

その役割を放棄して、自分ばかりが上に対してアピールしているようでは、「大係長」と呼ばれてもしかたがない。

よっぽど納得できる内容だったのだろうか、そのテキストのその項目だけは、今でもずっと記憶に残っている。

そして、なぜ今この「大係長」を思い出したのか。

現在の職場には、「大係長」しかいないからだ。