哀れ、シルクジャスミン
シルクジャスミンの花
職場のシルクジャスミンの鉢が、とうとう屋外へと追いやられてしまった。
開所祝いとして事務所にやって来てから、チラホラと白い小さな花を咲かせてはいたのだが、2つ3つたまに咲くくらいで、ほとんど花を見る事はなかった。
ところが、9月半ば頃から一気に咲き、ほぼ満開状態で、花を咲かせては散り、咲かせては散り、半日程で散ってしまうので、毎日掃除が大変になってしまった。
それもあるのだが、一番の原因は匂いである。
「ジャスミン」と名前に付くだけあって、元々花の香りが売りの観葉植物なのだ。
だが、いかんせん室内である。
私としては、はちみつレモンのような匂いで嫌いではないのだが、香りには人それぞれ好みがある。
しかも、ほのかに香る程度ならまだしも、結構な濃度でそこらじゅうプンプン匂いが漂ってくる。
強力に嫌がる人の方が大多数だった為、屋外へと置き場所を替えざるを得なくなったのだ。
中でも特にモンクを言っていたのがおばちゃんで、匂いがキツくて頭が痛くなるんだそうだ。
おばちゃんは、アロマがどーの、の最近よく出回っている柔軟剤が好きで、会社のタオルだのを洗濯する時はそれを使っている。
だからてっきり濃い匂いは何でも好きなんだろうと思っていた。
だが、このシルクジャスミンの匂いは嫌いらしい。
私は、柔軟剤のキツい匂いの方がダメで、昔からある普通の柔軟剤に替えてくれと頼んだ事があるが、
「えー、だって私こっちの方が好きなんだもん」
と言って、人が嫌がるのもおかまいなしに、そのままアロマの柔軟剤を使い続けている。
まあ、それはさておき、
調べてみたところ、幸いにもシルクジャスミンは屋外でも大丈夫な観葉植物らしい。
外に置くならと受皿もはずしたので、これからは気にする事なくジャンジャン水をやれる。
しかも、日当たりを好むらしいので、屋外に出して良かったかもしれない、と少しホッとした気分になった。
そんな所へ水を差すのが、例のロボット上司である。
「外に置いたら土がさぁ~」
と言い出した。
一体何を言っているのかわからない。
「え?土?」
と聞き返すと、
「雨が降ったら土が周りに飛び散って、汚くなるんじゃないかなぁ」
と言う。
台風で鉢ごと倒されて周りに土がこぼれるというならまだしも、雨が跳ねて土が飛び散るという状態が全く想像できない。
どんだけデカイ雨粒なんだよ。
雨は普通、土に染み込むと思うんだが。
しかも、土が飛び散る程の雨なら、その飛び散った土はキレイに流されてるんじゃないのか?
なんだかすごくムダなやり取りをした気がした。
「そらもう大丈夫でしょ」
と適当に返事をして、さっさと席に戻った。
ジャスミンの香りに似ているので、一般的にシルクジャスミン、オレンジジャスミンなどと呼ばれているが、本名は「月橘(ゲッキツ)」なんだそうで。
ジャスミンではなく、実は柑橘類。