オフィス・ジャングル
事務所移転のゴタゴタが終わってやれやれと思っていた。
ところが、また問題が持ち上がった。
植物問題である。
あれほどロボット上司が、緑という緑を排除して移転に臨んだというのに、あちらこちらの取引先企業から、移転の祝いの品として、ジャンジャン観葉植物だの胡蝶蘭だのが届いたのである。
ロボットが緑の事など考えていないレイアウトにしたおかげで、結局置き場所に困るという落とし穴にはまってしまった。
なにしろ、届いた数は観葉植物が各種10、胡蝶蘭の鉢が9である。
そんなに大きな事務所ではないのに、どーすんだコレ?ロボット、ザマアwww
という気持ちはひた隠す事にして、とにかくこの植物たちを敵から守る事にした。
ちなみに私は、家で風蘭を栽培しているとはいえ、園芸に詳しい方では決してない。
しかも、いかにも世話が難しそうな胡蝶蘭と、様々な種類の観葉植物である。
植物によって対応が違うだろうという事は想像に難くない。
最初、ロボット上司が、「飾り終えたら捨てる」と言い出すのではないかと思っていたのだが、意外とそれは言い出さなかった。
後で「ああ、なるほど」と思ったのだが、それ以上に面倒な言い分にも発展してしまったのだが。
観葉植物は、重要取引先の社長、副社長、専務、部長と、同じ取引先から各役職名ごとに届いていて、それが数を稼いでしまっている原因だった。
普通、一社一鉢なんじゃないのだろうか?
しかし、重要取引先から多数届いているおかげで、ロボットが処分すると言わなかったのもあるのだ。
ここまではまぁ良いのだが、問題はこの次である。
「最低1ヶ月はラッピングを外さないように」
と言い出したのである。
園芸素人の私でもわかる。
ラッピングを外さずにどうやって水やりしろと?
鉢の土が見えているラッピングならまだしも、鉢ごと覆ってしまっているラッピングのものもある。
このまま1ヶ月も置いておいたら、水やりが出来ずに干からびるか、ラッピングのなかにどんどん水が溜まって根腐れするかのどちらかであろう。
案の定、胡蝶蘭の育て方サイトにも、書かれていた。
「蒸れるので、せいぜい4~5日ほどでラッピングは外すようにしましょう」
そらそうだろう。
ロボットと絡むのは本当にイヤなのだが、しょうがない。
「ラッピングをはずさないと、水やりできないんではずしたいんですけど」
と一応言ってみた。
ロボットの返事は
「どこどこの○○社長とか、どこどこの××社長が新しい事務所を見にくるかもしれないからダメ」
要するに、頂いたお祝いの品を、ちゃんと飾っているアピールをしたいらしいのだ。
その取引先のお偉方がやって来た時に枯れていたら意味がないだろうに。
あーめんどくせえー(ーー;)
もうそのままにしておく事にした。
という訳で、まずネットで色んな観葉植物関連のサイトを検索してみた。
観葉植物の種類ごとに育て方が書かれている、大変親切なサイトがあった。
どうやら、店舗やオフィスなどに、観葉植物をリースしている企業のサイトのようだ。
今や、わからない事はインターネットを調べればすぐにわかる。
大助かりである。
しかもこのサイト、ちゃんとコメント欄が設けてあり、わからない事を書き込めば懇切丁寧にアドバイスの返信もしてくれるのだ。
大変ありがたい。
早速、植物の種類と数を伝え、置き場所に困っている旨、コメント欄に書き込んだ。
数日後、サイトを覗いてみると、私の質問に対する返信が書き込まれていた。
感動ものだ。
返信コメントによると、観葉植物を置くにあたって、一番考えなければならないのは日当たりなのだそうだ。
植物によって、日当たりを好むものと、そうでないものがある。
当然、日が当たらない場所には耐陰性があるものを置き、日が当たる場所には日当たりを好むものを置かなければならない。
そんな違いをわかっていない上に、取引先へのアピールとして、事務所入口すぐの場所に大半を寄せ集めて並べて置いてあり、他のものは置き場所がないからと、適当に空いている隙間にポンポン無造作に置いていた。
一体どこのアマゾンだ。どこのボルネオだ。
いくら緑に関心が無いからと言っても、あまりにもセンスが無さすぎるだろう。
コメントでは、どの植物がどういう明るさの部屋が良いのかを丁寧に説明してくれていて、本当に助かった。
一週間ほど経った頃、植物を適材適所に配置し直す事にした。
うまい具合に、色んな種類が届いていたおかげで、各スペースになんとか配置できた。
なんという神の采配。
よくぞ同じ種類の植物であふれなかったもんだと感心した。
一部、かぶっていたものがあるが、それ以上に様々あったので、あまり気にならなかった。
さて、後はラッピングの問題なのだが・・・
配置が決まって、すっかり収まってからこっち、枯らす気は毛頭ないのだ。