お餞別は「奥様に花」?
またもや、家族葬に押しかけ弔問する例のおばちゃんが、物議をかもす事になった。
今度は、退職、異動する人へのお餞別についてである。
今までは、動く人に対してのお餞別として、一人いくらと決められた金額を集め、それを祝儀袋に入れて本人に渡していた。
ある時から、現金ではなく、ネクタイなりボールペンなり、何らかの品物を購入し、それを本人に渡すようになったのだが、それを買いに行く役目が、例のおばちゃんなのだ。
ところが今回、異動する社員が何名かいるのだが、誰も餞別を集めようと言い出す者がいない。
気にしていなかったので、何とも思わなかったのだが、ある日おばちゃんがプリプリ怒りながら、
「お餞別の話、何か聞いてない?」
と私に尋ねてきた。
「ああ、そう言えばその話題、出てないね」
と答えると
「そうでしょう?どうするんだろう。そういうの、ちゃんとしてあげないといけないのに、誰もお金集めようとしてないんだよね。どうする?言う?言うよね?ね?ね?」
と急かすように聞いてきた。
つーか、「言う?」ってなんだ?
要するに、誰も行動しないので、私から上司に上申しろという事らしいのだが、なんで私?
知らねーよ、と思いつつ
「別に私からは言い出すつもりはないけど」
と答えると、さらにプリプリがヒートアップし、
「ええっ?!言わないの?なんでよ、じゃあどうするの?ねぇ?ねぇ?どうする?どうする?ね?ね?」
と私を責め立ててきた。
なんでこんな言われ方してるんだ、私…
このおばちゃん、本当にこんな話し方をする。
相手の返事を待つという事を知らない。
「どうなの?ねぇ?ねぇ?どうなの?ね?ね?ね?え?どう?ねぇ?ねぇ?…」
と、延々と続ける。
オメーが黙らないから返事出来ないんだよ!と言いたくなる。
ちなみに、お餞別に私は一切関係ないのだ。
いつもは社員の誰か(異動する人と同じ部署の社員など)が仕切って、「一人◯◯円なんでよろしく」と集めて回っていた。
私もおばちゃんもパートタイマーであるからして、出しゃばる立場でもないわけで、いつも受け身で言われてから動くのが常だ。
ところが、おばちゃんにしてみたら、いつの間にかお買い物担当になってしまった影響か、取り仕切る側の感覚になっている様なのだ。
それにしても、私に言わせようとするところがなんとも。
責任取りたくない態度がありありではないか。
「私は、集めないならそれでいいし、あまり気にならないけど、気になるんだったら自分から上の人に訊いてみれば?」
と言っておいた。
すると、そのおばちゃん、さも不満気に
「ええ〜?気にならないの?普通は気にするよね。一番大事じゃない。◯◯さんなんて、定年でここが最後なんだよ?次は再就職しないって言ってたし、奥さんにも花買って贈らないといけないし〜、うんぬんかんぬん」
とわめき出した。
多分、いつも言い出しっぺの人が今回異動する側になってしまった為、他に言い出す人がいないのだと思われるのだが、そんなもんだと個人的には思うのだ。
他にも、おばちゃんほど重要な捉え方をしている人はいない。
しかも、「奥さんに花」ってなんだ?
退職する人の奥方に花を贈るのは、世間では良くある事なのだろうか?
今まで色んな会社に勤めてきたが、私は初めて聞いた。
「いつも奥さんにも花贈ってるの?」
とおばちゃんに訊くと
「当たり前じゃない。だって普通は貰ったら嬉しいでしょ」
だって。
なんだか段々解ってきたような気がする。
このおばちゃん、自分がして欲しい事を、周りの意見はお構いなしにイケイケドンドンでやってるんじゃないだろうか?
しかも、そもそもお買い物が大好きで、ちょっと高額な品を贈り物仕様で包んで貰うというのは、なかなかに気分が高揚するものかもしれない。
私たちの会話を小耳に挟んだ嘱託のオジさんが、聞き捨てならんとばかりに口を挟んできた。
「アンタたちは社員じゃないんだから、余計な気を回さない方が良いと思うよ。
最近は、餞別を贈る習慣も無くなってきてるし、貰った人が変に気を使うかもしれないからね。今回を機に餞別の習慣を失くすつもりかもしれないし。まぁ回りに合わせとくのが良いよ」
それもそうだ、とそのオジさんに賛同した。
するとおばちゃん、ムッとした顔で
「それはあなた達の考え方でしょ!私はそうは思わないんだから、やっぱりやらないのはおかしい!絶対やるべきだと思う!」
とキレ出した。
面倒くせぇ〜…
それもアンタだけの考え方でしょーが。
なんで自分の考えだけ採用されるべきと思えるんだか。
こんな会話に付き合うだけでもダルいのだが、取り敢えず返事はしておいた。
「じゃあ、私からは言わないけど、あなたから皆んなにそう言ってお金集めたら?集めるんなら出すから」
このおばちゃん、ほぼ仕事に関係なく、どうでもいいっちゃどうでもいいような事にばかり拘って大騒ぎするので、本当に面倒くさい。
なぜこれを、さも一大事かのように問題にするのか理解に苦しむ。
正直ゲンナリする。